前回は子どもと親についてお送りしましたが、今回は「子どもの健康と命」です。
第6条 (生命への権利、生存・発達の確保)
1. 締約国は、すべての子どもが生命への固有の権利を有することを認める。
2.締約国は、子どもの生存および発達を可能なかぎり最大限に確保する。
この条ではすべての子どもの命や健康の権利について書かれています。
第23条 (障害児の権利)
1.締約国は、精神的または身体的に障害を負う子どもが、尊厳を確保し、自立を促進し、かつ地域社会への積極的な参加を助長する条件の下で、十分かつ人間に値する生活を享受すべきであることを認める。
2.締約国は、障害児の特別なケアへの権利を認め、かつ、利用可能な手段の下で、援助を受ける資格のある子どもおよびその養育に責任を負う者に対して、申請に基づく援助であって、子どもの条件および親または子どもを養育する他の者の状況に適した援助の拡充を奨励しかつ確保する。
3. 障害児の特別なニーズを認め、2に従い拡充された援助は、親または子どもを養育する他の者の財源を考慮しつつ、可能な場合にはいつでも無償で与えられる。その援助は、障害児が可能なかぎり全面 的な社会的統合ならびに文化的および精神的発達を含む個人の発達を達成することに貢献する方法で、教育、訓練、保健サービス、リハビリテーションサービス、雇用準備およびレクリエーションの機会に効果 的にアクセスしかつそれらを享受することを確保することを目的とする。
4.締約国は、国際協力の精神の下で、障害児の予防保健ならびに医学的、心理学的および機能的治療の分野における適当な情報交換を促進する。その中には、締約国が当該分野においてその能力および技術を向上させ、かつ経験を拡大することを可能にするために、リハビリテーション教育および職業上のサービスの方法に関する情報の普及およびそれへのアクセスが含まれる。この点については、発展途上国のニーズに特別 な考慮を払う。
この条ではいろいろな形態の障害児の子どもの権利について書かれています。
障害は手足や感覚器、体が不自由な身体障害、知的の遅れがある知的障害、うつ病などの心の病のある精神障害、コミュニケーションなどの発達にアンバランスがある発達障害、先天的・後天的に重い病気のある特定疾患(難病)などがあります。
いずれも個々の障害(病)に対応した支援をしなければなりません。
身体障害では点字図書の普及や手話通訳の増員、車いすの障害児に対するバリアフリーなど。知的障害では普通の子どもと一緒に勉強できることは可能な限り行うこと、それができない場合は別々で行うこと、コミュニケーションの配慮など。精神障害ではその子どもに対する暴言をやめることや家族や学校などが安心できる環境作り、薬の投与など。発達障害では苦手な行動を避け、得意分野を活かすことなど。特定疾患では最新の病気の治療手段を確立することなどです。
手帳では、日本では身体障害を対象にした「身体障害者手帳」、知的障害を対象にした「療育手帳」、精神障害を対象にした「精神障害者保健福祉手帳」とそれぞれあります。障害者手帳がなければ、障害者支援が受けられません。
発達障害と特定疾患には専用の手帳はなく、支援が手薄なのが大きな問題です。特に成人になった後の支援が非常に遅れています。発達障害の場合は社会人になったときに職場の人間関係の崩壊などの大きな問題が生じ、特定疾患の場合は子どもの時に受けることができた支援が大人になったら支援が止まってしまい、医療費の大幅な負担を強いられます。
日本は身体障害などの支援を継続すると同時に、発達障害と特定疾患に対する支援を急がなければなりません。
第24条 (健康・医療への権利)
1.締約国は、到達可能な最高水準の健康の享受ならびに疾病の治療およびリハビリテーションのための便宜に対する子どもの権利を認める。締約国は、いかなる子どもも当該保健サービスへアクセスする権利を奪われないことを確保するよう努める。
2.締約国は、この権利の完全な実施を追求し、とくに次の適当な措置をとる。
a. 乳幼児および子どもの死亡率を低下させること。
b. 基本保健の発展に重点をおいて、すべての子どもに対して必要な医療上の援助および保健を与えることを確保すること。
c. 環境汚染の危険およびおそれを考慮しつつ、とりわけ、直ちに利用可能な技術を適用し、かつ十分な栄養価のある食事および清潔な飲料水を供給することにより、基礎保健の枠組の中で疾病および栄養不良と闘うこと。
d. 母親のための出産前後の適当な保健を確保すること。
e. すべての社会構成員とくに親および子どもが子どもの健康および栄養の基礎的知識、母乳育児および衛生ならびに環境衛生の利益、ならびに事故の予防措置を活用するにあたって、情報が提供され、教育にアクセスし、かつ援助されることを確保すること。
f. 予防保健、親に対する指導、ならびに家庭計画の教育およびサービスを発展させること。
3.締約国は、子どもの健康に有害な伝統的慣行を廃止するために、あらゆる効果 的でかつ適当な措置をとる。
4.締約国は、この条の認める権利の完全な実現を漸進的に達成するために、国際協力を促進しかつ奨励することを約束する。この点については、発展途上国のニーズに特別 な考慮を払う。
この条では子どもが病院などの医療を受ける権利について書かれています。
子どもが病気またはケガで家庭でのセルフケアや病院での治療を受ける権利があります。これ以外にも栄養たっぷりの食事も重要です。
aは子どもの死亡率、特に5歳以下の乳幼児の死亡率をなくすことを挙げられています。特に発展途上国では飢餓や紛争などで子どもの命が奪われています。
dは妊娠・授乳中の母親に対するケアを確保しなければなりません。
第25条 (医療施設等に措置された子どもの定期的審査)
締約国は、身体的または精神的な健康のケア、保護または治療のために権限ある機関によって措置されている子どもが、自己になされた治療についておよび自己の措置に関する他のあらゆる状況についての定期的審査を受ける権利を有することを認める。
全ての国は病気などで入院している子どもの定期的審査を受ける権利を有することを認めることを意味します。
第26条 (社会保障への権利)
1.締約国は、すべての子どもに対して社会保険を含む社会保障を享受する権利を認め、かつ、国内法に従いこの権利の完全な実現を達成するために必要な措置をとる。
2.当該給付については、適当な場合には、子どもおよびその扶養に責任を有している者の資力および状況を考慮し、かつ、子どもによってまた子どもに代わってなされた給付の申請に関する他のすべてを考慮しつつ行う。
この条では子どもの社会保障を受ける権利について書かれています。
社会保障は障害者や高齢者、貧困者などに対する生活支援や医療保険などがあります。
第27条 (生活水準への権利)
1.締約国は、身体的、心理的、精神的、道徳的および社会的発達のために十分な生活水準に対するすべての子どもの権利を認める。
2.(両)親または子どもに責任を負う他の者は、その能力および資力の範囲で、子どもの発達に必要な生活条件を確保する第一次的な責任を負う。
3.締約国は、国内条件に従いかつ財源内において、この権利の実施のために、親および子どもに責任を負う他の者を援助するための適当な措置をとり、ならびに、必要な場合にはとくに栄養、衣服および住居に関して物的援助を行い、かつ援助計画を立てる。
4.締約国は、親または子どもに財政的な責任を有している他の者から、自国内においてもおよび外国からでも子どもの扶養料を回復することを確保するためにあらゆる適当な措置をとる。とくに、子どもに財政的な責任を有している者が子どもと異なる国に居住している場合には、締約国は、国際協定への加入または締結ならびに他の適当な取決めの作成を促進する。
26条と延長線になりますが、各国では欧米を中心にいろんな境遇を持っている人に対する社会保障が充実しています。
しかし日本では、いろんな境遇の人に対する社会保障が行き渡っていません。
高齢者等に支給する年金制度が崩壊し、これから高齢者になる予定の若者の年金が受けられなくなり、障害者に対する年金も多くの障害者の支給がストップされ、これから受ける予定の障害者もよほど重度の身体障害がなければ受けることができません。
不況で失業者が増加し、就職活動も超狭き門になりました。1年以上たっても就職が決まらない人たちが多く存在します。
年金が受けられなくなり、失業手当も受けられなくなったら、最後のつなぎが生活保護しかありません。その生活保護も日本政府によって崩壊しようとしています。これによって生活ができず、自殺者や餓死者が増加しています。
日本では、貧困者や障害者等に対する社会保障の受給は他の国よりも非常に少なく、支援が必要な人が行き渡らない状況になっています。
日本は社会保障の充実と安心して生活できる環境づくりを急がなければなりません。何もしないまま放置し、人の生活をつぶそうとするのは犯罪です!!
第32条 (経済的搾取・有害労働からの保護)
1.締約国は、子どもが、経済的搾取から保護される権利、および、危険があり、その教育を妨げ、あるいはその健康または身体的、心理的、精神的、道徳的もしくは社会的発達にとって有害なるおそれのあるいかなる労働に就くことからも保護される権利を認める。
2.締約国は、この条の実施を確保するための立法上、行政上、社会上および教育上の措置をとる。締約国は、この目的のため、他の国際文書の関連条項の留意しつつ、とくに次のことをする。
a. 最低就業年齢を規定すること。
b. 雇用時間および雇用条件について適当な規則を定めること。
c. この条の効果的実施を確保するための適当な罰則またはまたは他の制裁措置を規定すること。
この条では子どもの労働について挙げられています。
日本では高校生年齢のみ、働くことが認められています。中学生年齢までの子どもの場合は芸能活動以外働くことが認められていません。
高校生年齢の子どもでも、働く職種はサービス業などに限られています。また、薬物や危険物を使用する労働や、学業に支障をきたす労働、性的行為を行う労働などは禁止されています。
発展途上国では子どもが働いてもお金をピンハネされたり、危険な労働を強いられたりしています。年齢にかかわらず、全ての子どもが安心して生活したり、将来の生きがいになるような労働でなければなりません。
次回は厳しい生活環境を強いられている子どもの保護についてお送りします。
*参考リンク*
子どもの権利条約ネットワーク:http://www.ncrc.jp/
日本ユニセフ協会(子どもの権利条約):http://www.unicef.or.jp/crc/
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