梅の実学園・なんでもマニュアル図鑑

生活に関するマナーや自己啓発、雑学を集めた教養ページです。

子どもの人権(その8)

前回は様々な被害に巻き込まれた子どもの保護についてお送りしました。

 

今回はその延長線として、犯罪を犯した子どもについてお送りします。

第37条 (死刑・拷問等の禁止、自由を奪われた子どもの適正な取り扱い)

締約国は、次のことを確保する。

a.いかなる子どもも、拷問または他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いもしくは刑罰を受けない。18歳未満の犯した犯罪に対して、死刑および釈放の可能性のない終身刑を科してはならない。

b.いかなる子どももその自由を不法にまたは恣意的に奪われない。子どもの逮捕、抑留または拘禁は、法律に従うものとし、最後の手段として、かつ最も短い適当な期間でのみ用いられる。

c.自由を奪われたすべての子どもは、人道的におよび人間の固有の尊厳を尊重して取扱われ、かつその年齢に基づくニーズを考慮した方法で取扱われる。とくに、自由を奪われたすべての子どもは、子どもの最善の利益に従えば成人から分離すべきでないと判断される場合を除き、成人から分離されるものとし、かつ、特別 の事情のある場合を除き、通信および面会によって家族との接触を保つ権利を有する。

d.自由を奪われたすべての子どもは、法的および他の適当な援助に速やかにアクセスする権利、ならびに、その自由の剥奪の合法性を裁判所または他の権限ある独立のかつ公平な機関において争い、かつ当該訴えに対する迅速な決定を求める権利を有する。

 

第40条 (少年司法)

1.締約国は、刑法に違反したとして申し立てられ、罪を問われ、または認定された子どもが、尊厳および価値についての意識を促進するのにふさわしい方法で取扱われる権利を認める。当該方法は、他の者の人権および基本的自由の尊重を強化するものであり、ならびに、子どもの年齢、および子どもが社会復帰しかつ社会において建設的な役割を果 たすことの促進が望ましいことを考慮するものである。

2.締約国は、この目的のため、国際文書の関連する条項に留意しつつ、とくに次のことを確保する。

a.いかなる子どもも、実行の時に国内法または国際法によって禁止されていなかった作為または不作為を理由として、刑法に違反したとして申し立てられ、罪を問われ、または認定されてはならない。

b.法的に違反したとして申し立てられ、または罪を問われた子どもは、少なくとも次の保障をうける。

i.法律に基づき有罪が立証されるまで無罪と推定されること。

ii.自己に対する被疑事実を、迅速かつ直接的に、および適当な場合には親または法定保護者を通 じて告知されること。自己の防御の準備およびその提出にあたって法的または他の適当な援助をうけること。

iii.権限ある独立のかつ公平な機関または司法機関により、法律に基づく公正な審理において、法的または他の適当な援助者の立会いの下で、および、とくに子どもの年齢または状況を考慮し、子どもの最善の利益にならないと判断される場合を除き、親または法定保護者の立会いの下で遅滞なく決定を受けること。

iv.証言を強制され、または自白を強制されないこと。自己に不利な証人を尋問し、または当該証人に尋問を受けさせること。平等な条件の下で自己のための証人の出席および尋問を求めること。

v.刑法に違反したと見なされた場合には、この決定および決定の結果科される措置が、法律に基づき、上級の権限ある独立のかつ公平な機関または司法機関によって再審理されること。

vi.子どもが使用される言語を理解することまたは話すことができない場合は、無料で通訳の援助を受けること。

vii.手続のすべての段階において、プライバシィが十分に尊重されること。

3.締約国は、刑法に違反したとして申し立てられ、罪を問われ、また認定された子どもに対して特別に適用される法律、手続、機関および施設の確立を促進するよう努める。とくに次のことに努める。

a.刑法に違反する能力を有しないと推定される最低年齢を確立すること。

b.適当かつ望ましい時はつねに、人権および法的保障を十分に尊重することを条件として、このような子どもを司法的手続によらずに取扱う措置を確立すること。

4.ケア、指導および監督の命令、カウンセリング、保護観察、里親養護、教育および職業訓練のプログラムならびに施設内処遇に替わる他の代替的措置などの多様な処分は、子どもの福祉に適当で、かつ子どもの状況および罪のいずれにも見合う方法によって子どもが取扱われることを確保するために利用可能なものとする。

第37条、第40条は少年犯罪に関する項目について書かれていますが、これは非常に難しい問題です。

子どもは虐待やいじめ、大人たちによる犯罪に巻き込まれるなどの被害に遭われた子どものほうが多いです。

 

しかし、逆のケースもあります。子どもが加害者の場合です。

子どもが親やきょうだいに暴力をふるったり、クラスメイトをいじめたりする子がいます。さらにそれを度を越える犯罪を犯す子どももいます。

子どもがお金や物を盗んだり、法的に違反するウソをついたり、人を傷つけたり、ひどい場合は殺人を犯す子どもが多いです。

 

世界では犯罪を犯した子どもに対し、大人の犯罪者とは別の法律により、逮捕・補導をすることができます。

 

日本では「少年法」という少年犯罪の法律があります。

犯罪を犯したおおむね12歳未満の子どもは逮捕はせず、警察に保護・補導をし、児童相談所等での調査を経て、児童自立支援施設に収容されます。一定の期間の教育・訓練の後、児童相談所での判定により、保護観察処分として家庭に返すかそのまま児童自立支援施設で生活をします。

犯罪を犯したおおむね12歳以上18歳未満の子どもの場合は犯罪の度合いにもよりますが、警察に逮捕・補導されます。その後警察の取り調べ、家庭裁判所での裁判を経て、少年院送致か保護観察処分として、家庭に返します。少年院では一定期間の訓練や学校教育などを行います。普通の家に住むより自由はなく、少年院の職員たちが少年・少女の生活を細かく管理します。保護観察の間は地元の保護司が様子をうかがいに行きます。凶悪犯罪で人を死亡させた16歳以上の場合は逆送をすることができます。また、18歳以上20歳未満の成人の犯罪者も少年法の対象年齢ですが、実名を公表しないほか、少年院送致や保護観察処分、非常に重い刑罰(死刑など)を求刑しない以外は大人の犯罪と同じ扱いです。

 

裁判では窃盗などの軽い犯罪では無罪か有罪でも執行猶予つきのものがほとんどです。しかし、殺人や複数の人への傷害事件は有罪となります。殺人などの凶悪犯罪の場合、大人の犯罪者の場合は死刑や無期懲役、かなり長期間の有罪にすることができますが、子どもの場合は一定期間の有罪はできますが、死刑や無期懲役にすることができません。

日本では「神戸児童連続殺傷事件」や「奈良放火殺害事件」など、多くの18歳未満の少年・少女たちによる犯罪が増加しています。これを受けて、少年事件の刑事責任年齢が引き下げになり、今後の年齢引き下げは考えられます。

海外でも少年犯罪を犯した少年・少女たちが多く、アメリカなどの多くが少年・少女の刑事事件の年齢引き下げを実施していますし、刑罰も重くなっています。

 

海外でも日本でも、一部の国を除き、凶悪な少年犯罪を犯した少年・少女は死刑や終身刑(日本では無期懲役)は行っていません。これにより、犯罪被害者の方を中心に、大きな議論になっています。

例えば子どもを殺された遺族たちは、子どもを殺した犯人が大人だったら死刑や終身刑を要求することができます。しかし、子どもを殺した犯人が子ども(少年・少女)だったら、遺族たちは死刑や終身刑を要求しても、死刑や終身刑にすることができません。少年法により、犯罪被害者やその家族・遺族がどうすることもできない悲しみや心の傷を背負ってしまいます。

 

子どもの権利条約」では犯罪を犯した子どもに対する重い刑罰を科せることはできないし、少年院や児童自立支援施設でも社会復帰を目指した教育が中心です。凶悪犯罪が多い世界ではこの条約の37条と40条に対する内容について各国で話し合うべきだと思います。子どもの保護は当然のことですが、犯罪被害者に対する配慮が必要だと思います。

 

次回は最終回。武力紛争と子どもの保護についてお送りします。

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*参考リンク*

子どもの権利条約ネットワーク:http://www.ncrc.jp/

日本ユニセフ協会子どもの権利条約):http://www.unicef.or.jp/crc/

ウィキペディア少年法):http://wpedia.goo.ne.jp/wiki/%E5%B0%91%E5%B9%B4%E6%B3%95#cite_note-47news20070525-6

 

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